朝の畑。
葉にぽつんと“かじられた跡”を見つけた瞬間、
その日のテンションがじわっと下がる。
ヨトウムシ、コナガ、アオムシ、
ブロッコリーはアブラナ科の中でも、とりわけ虫に狙われやすい。

気温が高い年ほど発生は増え、
防除の手間もコストもかさむ。
「農薬、また一回足すか…」
そんなため息が自然とこぼれることも多い。
ところが最近、
“農薬を減らしても虫食いが少ない”
そんな圃場が少しずつ現れ始めている。
共通していたのは、
土づくりに ケイ素(シリカ) を取り入れていたという点だった。
農薬でもネットでもない。
植物の“体そのもの”を強くすることで、虫に負けにくくする。
そんな新しいアプローチが、静かに広がっている。
■ 虫に食われやすい株と、食われにくい株。違いは“細胞壁”
ブロッコリーが虫に狙われやすい理由は、
葉と茎の細胞壁が柔らかく、傷つきやすい構造にある。
日本のアブラナ科研究でも、
「細胞壁の強度が低い株ほど、コナガなどの食害が進みやすい」
と明確に示されている。
細胞壁が弱いと、
- 噛まれた傷が広がる
- そこから病原菌が入りやすい
- 食害跡が乾いてさらに破れやすい
- 成長点がストレスを受けて生育が乱れる
結果として、
花蕾の揃いは崩れ、品質も不安定になる。
しかしこの“壊れやすさ”は変えられる。
鍵になるのが ケイ素(シリカ)だ。
■ ケイ素は、葉を“噛まれにくい構造”に変える
国際分子科学誌(IJMS)をはじめとした研究では、
ケイ素が細胞壁に沈着し、外側から補強材として働くことが報告されている。
補強された細胞壁は、
- 虫が噛んでも進みにくい
- 食われても傷が広がらない
- 表面が乾きにくく、二次被害が少ない
- 成長点へのダメージが最小限になる
つまりケイ素は、
“虫が食べづらい葉”をつくる素材

農薬のように虫を殺すのではなく、
葉そのものを強くすることで、結果的に守りにつながるアプローチだ。
■ 実は“根が強い株”ほど食害に負けにくい
案外知られていないが、
害虫が広がる圃場の多くは、根が弱っている。
根が疲れると、
- 葉が薄くなる
- 回復が遅くなる
- 病気が入りやすくなる
- 花蕾が揃いにくくなる
もみ殻由来のシリカは多孔質で、
日本の土壌物理研究でも
- 団粒化が進む
- 通気性が良くなる
- 過湿や酸欠で根が止まりにくい
ことが確認されている。
海外(CSIRO・WUR)でも、
ケイ素が根の細胞壁を補強し、
高温・乾燥・過湿でも“つぶれにくい根”をつくることが示されている。
根が強い株は、
そもそも虫に食われても 回復が早い。
これは、圃場全体を見たときに非常に大きな差になる。
■ ブロッコリーの“匂いと味”が変わると、虫の行動も変わる
アブラナ科の害虫は、
葉から出る揮発性化合物(グルコシノレート等)を手がかりに飛来する。
植物生理の研究では、
細胞がストレスで崩れると、虫の好む匂いが増える
細胞壁がしっかりした株は、その匂いの発生が少ない
とされている。
つまりケイ素によって細胞が安定すると、
“虫が寄りにくい葉”が自然と育つ。
これは農薬とはまったく別の次元の効果だ。

■ 農薬を減らすと、むしろ品質が上がる理由
「農薬を減らせば虫食いが増える」
それはもう古い常識になりつつある。
細胞壁と根がケイ素で整うと、
- 葉が厚く、光合成が落ちない
- ストレスで花蕾が硬くならない
- 食害跡からの腐れが出にくい
- 花蕾の形が揃いやすい
- 病害の侵入点が減る
つまり、
農薬を減らしても落ちない品質の“体づくり”ができている状態。
“農薬を減らす”のではなく、
“農薬がいらない状態が増える” のが本質だ。
■ 現場で起きているのは、“虫食いが少ない圃場”という事実
実際にケイ素を取り入れた農家が語る声は、不思議なほど共通している。
「コナガが入り込みにくくなった」
「食害跡の広がりが止まる」
「1〜2回農薬を減らしても品質が落ちない」
「葉の厚さが違う」
「花蕾の形が乱れない」
どれも、
細胞壁・根・葉・土のすべてが揃った圃場で起きる現象だ。
■ 最後に
ブロッコリーが虫に食われるかどうかは、
農薬の量ではなく “葉と根の強さ” が決める。
ケイ素は、
- 葉の細胞壁を補強し
- 根を守り
- 土をふかふかにし
- 虫が食べにくい体質を育てる
そんな自然素材だ。
その結果、
農薬を減らしても品質が落ちないどころか、
花蕾の揃い・締まり・見た目の良さが際立つ。
虫食いに悩むほど、
“ケイ素を入れた圃場の安定感”が光る。
自然の力で育つ、
虫に食われないブロッコリー。
その現実味は、年々増している。

