あるトマト農家が、収穫の終盤にぽつりとこぼした。
「今年は肥料の出費が減ったのに、利益はむしろ増えたんですよ。」

最初は軽い冗談に聞こえた。
肥料を減らすというのは、本来リスクそのものだ。
樹勢が落ちる、花が止まる、収量が下がる。
農家なら誰もが警戒する選択だし、失敗したら一年を丸ごと失うこともある。
ところが、その圃場では違った。
「肥料を減らす=不安」ではなく、
「自然の力が流れれば=利益はむしろ増える」
そんな逆転が、静かに起きていた。
その背景には、ここ数年じわり広がっている“静かな考え方”があった。
■ 自然の力が働くと、肥料の“無駄”が消えていく
化学肥料を減らして利益が上がったからといって、
特別なテクニックを使ったわけではない。
むしろその逆で、
自然の力が流れやすい状態をそっと整えただけだった。
自然の力とは何だろう。
- 土が空気を含むこと
- 微生物が有機物をほどいて循環させること
- 根が気負わず呼吸すること
- 葉がスムーズに光を受け止めること
どれも肥料とは直接関係ないようでいて、
植物の“働きを支える本流”である。
農研機構(NARO)の研究でも、
根と微生物が活発な土では、肥料の利用効率がずっと高いと示されている。
つまり、自然の力が流れている畑ほど、
化学肥料の“出番”が減る。
肥料を減らすことが目的なのではない。
自然の働きを邪魔しない土づくりが、利益を押し上げる鍵なのだと思う。
■ 利益を押し上げたのは、“根の体力”だった
収量を決めるのは肥料の量ではなく、
どれだけ根が働けるかだ。
日本の大学の根圏研究でも、
土が固く、酸素が少ないと根の成長点がすぐ傷み、
肥料吸収が一気に下がることが明確にされている。
そこで、この農家が使っていたのが
もみ殻由来のシリカ(ケイ素)だった。
もみ殻シリカは多孔質で、
土に混ざると自然に“空気の通り道”をつくり、根の呼吸を助ける。
結果、根が自力で動き、
少ない肥料でもきちんと吸い上げる体勢が保たれる。
CSIROやWURなど世界の研究でも、
シリカを吸収した根は高温や乾燥で潰れにくく、
“止まらない根”になることが報告されている。
根が強い年に、肥料を減らしても乱れないのは、
どうやら万国共通の現象らしい。

■ 微生物が動き出すと、“肥料をつくる土”になる
もう一つの理由は、
圃場の微生物が目に見えて変わったことだ。
もみ殻シリカの細かい穴は、微生物にとってちょうど良い“住処”になる。
日本の土壌生態研究でも、
- 微生物多様性が上がる
- 菌根菌の定着が良くなる
- 有機物分解がスムーズになる
といった変化が確認されている。
微生物が動けば、
土自身が“肥料”をつくりはじめる。
“肥料を入れなくても育つ”のではなく、
“土が必要な分だけ作物に渡している”という状態に近い。
この感覚は、現場に立つほど納得がいく。
■ 葉が疲れないと、利益はもっと残る
自然の力は土だけではない。
葉の働きも、収益に直結している。
強光や高温が続くと、
葉の細胞壁が疲れ、すぐ光合成が落ちてしまう。
そうなると、どれだけ肥料を入れても実に変わらない。
オランダの園芸研究では、
シリカを取り込んだ葉は光ストレスに強く、
光合成の落ち込みがゆっくりになると報告されている。

葉が疲れない → 肥料が無駄にならない → 収量と利益が安定する。
自然の力が働く圃場は、
ただ肥料費が下がるだけではなく、
“ブレない収量”をつくるのだ。
■ 無駄なコストが消え、利益が残る“静かな農法”
この農家が話してくれた圃場の変化は、どれも控えめで確かなものだった。
- 肥料の購入量が減った
- 追肥の手間が減った
- 樹勢が後半まで落ちない
- 品質が安定し、出荷ロスが減る
つまり、
「コストが下がり、収量は落ちず、品質はむしろ良くなる」
という、理想的な循環が生まれた。
自然の力を流す農法は、
派手な設備も、高価な技術も必要ない。
ただ、土・根・微生物の流れを整えるだけで、
“利益の落ちにくい農業”が実現する。
■ 最後に
化学肥料に頼り切る農業は、短期的には楽でも、長く続けるほど土が疲れる。
一方で、自然の力に寄り添う農法は、
植物が自分で育つ環境を整え、
肥料の無駄を消し、収量のブレを減らしてくれる。
もみ殻由来のシリカは、
土を呼吸させ、根を守り、微生物を動かし、
自然の流れが滞りなく巡る畑をつくるための、
とても静かで実用的な素材だ。
大きな投資をしなくても利益を増やせる農業は、
派手ではないが、
確実に次の世代へつながる選択でもある。
自然の力を味方につけることで、
農家の暮らしも、畑の寿命も、
少しずつ続けやすい形へ変わっていく。

