真夏のハウスに一歩足を踏み入れた瞬間、
むっとした熱気に思わず息をのみ、
同時に「株、大丈夫だろうか…」と胸のどこかがざわつく。

高温は、トマトにとって“静かなストレス”だ。
葉は蒸散のリズムを乱し、根は酸素を奪われ、
一日のうちに小さな傷がじわじわ積もっていく。
それが何日も続けば、
花が落ち、樹勢が落ち、
ときには突然の萎れへとつながることもある。
そんな厳しい環境のなか、
ある農家の言葉が印象に残っている。
「今年は暑さの中でも、株がびくともしないんだよ。」
理由を聞くと、ひとつだけ新しい試みがあった。
土づくりにもみ殻由来のシリカを加えたこと。
なぜ、ただのもみ殻が
高温に負けないトマトを育てるのか。
秘密は、土と細胞の奥で静かに働くシリカの力にあった。
■ 高温でトマトが弱る“本当の理由”
トマトが暑さに負けるのは、
単純に気温が高いからではない。
高温になると、
- 根が酸欠になりやすい
- 葉が光ストレスを受ける
- 細胞壁がゆるみやすくなる
- 蒸散の流れが乱れる
こうした小さな乱れが積み重なり、
株全体が“踏ん張れない状態”に落ちていく。
日本の大学の根圏研究でも
「高温時、根の細胞壁は崩れやすくなる」
と報告されている。
つまり、暑さそのものよりも、
暑さで細胞が壊れやすい状態になってしまうことが問題なのだ。
そこへシリカが効いてくる。
■ シリカは細胞壁の“盾”になる
国際分子科学誌(IJMS)の研究では、
シリカが細胞壁に沈着し、
細胞そのものを外側から支える力を持つことが示されている。
細胞壁が強ければ、
- 高温でも細胞がつぶれにくい
- 蒸散の乱れに耐えやすい
- 葉の光合成が落ちにくい
つまりシリカは、
高温ストレスに耐えるための“細胞レベルの盾”になる。
世界各地のストレス研究でも、
“暑さに強い株=細胞が強い株”
という事実は一致している。
■ もみ殻シリカの“土づくり力”がさらに支える
もみ殻由来のシリカには、
他のシリカ資材にはあまり見られない特徴がある。
それは、
土をふかふかにし、空気と水のバランスを整える力だ。
日本の土壌物理研究では、
もみ殻の多孔質構造が団粒化を促し、
通気性を上げることが確認されている。
ハウスの高温下で根が弱りやすい最大の理由は“酸欠”だが、
土がふかふかで空気を含んでいれば、
根は暑さの中でも呼吸できる。
根が呼吸できれば、
水も栄養も途切れず運ばれ、樹勢が落ちない。
つまり、細胞壁(内側)+ 団粒構造(土側)
という二重の支えで、暑さを超えられる株ができあがる。
■ “午後のしおれ”が減るのは、葉が安定しているから
暑さに弱るのは根だけではない。
葉も光と熱で疲れ、蒸散バランスが崩れる。
オランダ・WUR(園芸研究所)の研究では、
「細胞壁の弱りが蒸散の乱れを引き起こす」
とされている。
シリカが葉の細胞壁を補強すると、
強光下でも葉がバテにくく、
午後のしおれが減る。
葉が働いていれば、
高温期の花落ちや樹勢低下を防ぐことができる。
■ 現場で起きている“夏の変化”
もみ殻シリカを使っている農家は、次のように語る。
- 「去年より午後のしおれが少ない」
- 「樹勢が落ちず、花が長く続く」
- 「根が白くて太いまま」
- 「高温期でも実の張りが落ちない」
- 「暑さの“急な失速”がなくなった」
科学的データと現場の体感が、
静かに重なりはじめている。
■ 暑さに強い株は、“細胞と土”でつくられる
ハウスの高温対策といえば、
遮光・換気・灌水調整が中心だ。
もちろんどれも重要だが、
本当に暑さに強い株は、
細胞の中と土の中で準備されている。
細胞壁が強い
根が酸欠に負けない
土が呼吸できる
葉がバテない
蒸散が安定する
こうした“内側の積み重ね”が、
結果として暑さでも枯れないトマトを育てる。
その準備を支えているのが、
もみ殻シリカなのだ。
■ 最後に
もみ殻から生まれたシリカは、派手さこそないが、
高温期のトマトにとっては驚くほど頼もしい味方になる。
細胞壁を守り、
根が呼吸できる土をつくり、
葉の働きを安定させ、
土をふかふかに保つ。
それらが重なることで、
真夏のハウスでも株は崩れず、
収量も品質も静かに安定していく。
高温が避けられない今だからこそ、
“株そのものの強さ”を引き出す土づくりが何より大切になる。
その静かな力が、もみ殻シリカには宿っている。
