夏の終わり、窓を叩く大粒の雨音を聞きながら、
「今日は株が疲れていないだろうか」と胸の奥がふとざわつくことがある。
多湿で根は呼吸を奪われ、
強い風で葉が擦れ、
急な温度変化で花が落ちる。
力強く見えるトマトも、実は“環境の揺さぶり”にとても敏感な生き物だ。
そんな折、ある農家がぽつりと言った。
「今年は、雨でも風でも株が崩れないんだよ。不思議なくらい。」
話を辿っていくと、土づくりにひとつだけ新しい試みがあった。
もみ殻由来のシリカ(ケイ素)を取り入れた年だったのだ。
なぜ、ただのもみ殻が
“雨にも風にも負けない株”を育てるのか。
理由は、土と細胞の奥深くで静かに働くシリカの力にあった。
■ 水をはじき、風に踏ん張る“細胞壁”づくり
雨の日にトマトがぐったりしやすいのは、
根が酸欠になり、細胞が潰れやすくなるからだ。
日本の大学の根圏研究でも、
「高湿度で細胞壁が弱ると吸水リズムが乱れる」
という報告がある。
そこで役に立つのがシリカである。
国際分子科学誌(IJMS)の研究によれば、
シリカは細胞壁に入り込み、外側から細胞を支える力を高めてくれる。
細胞壁がしっかりしていれば、
- 多湿でも根がつぶれにくく
- 強風でも葉が破れにくく
- 気温差のストレスにも負けにくい
つまり、
“環境の揺れに動じない細胞”をつくる素材
とも言える。
■ もみ殻の“多孔質構造”が土を救う
もみ殻由来のシリカが特に優れているのは、
土そのものを変える力にある。
もみ殻は非常に多孔質で、
日本の土壌物理の研究でも、
「団粒構造をつくり、通気性を高める」
ことが確認されている。
通気性が良くなると、
- 大雨のあとでも根が呼吸でき
- 水の滞留が減って根腐れのリスクが低くなり
- 乾燥時もほどよく水を保持できる
雨にも乾燥にも強い“ふかふかの土”は、
トマトにとってこれ以上ない環境だ。
根が生きていれば、株は崩れない。
■ 風で揺れても、葉が“負けない”理由
風害は、葉の細胞が壊れることから始まる。
こすれ、ひねり、急な蒸散。
それらが重なれば、葉はすぐに疲れを見せる。
オランダ・WUR(園芸研究所)の報告でも、
「細胞壁の弱った葉ほど、風で光合成が落ちる」
とされている。
シリカは葉の細胞壁にも沈着するため、
摩擦や乾燥への耐性が上がる。
農家がしばしば口にする
「葉が分厚くなった気がする」
という感覚は、この細胞レベルの変化と重なっている。
風が吹いても、葉の働きが落ちない。
これは樹勢を長く保つうえで、大きな強みになる。
■ 雨のあと、風のあと…“株が崩れない”圃場が持つ共通点
もみ殻シリカを使った圃場には、こんな特徴があるという。
- 根の白さが長く続く
- 大雨後でも株が倒れない
- 強風の日も葉が傷みにくい
- 気温差の激しい日でも花がしおれない
- 樹勢がゆっくり、長く続く
これは数字よりも、
その場を歩いたときに感じる“畑の空気”の違いだ。
海外の植物ストレス研究(CSIRO など)でも、
シリカが“環境変動への安定性”を高める素材であることが示されている。
そして日本のもみ殻シリカはその働きを、
土壌物理の改善というかたちでさらに後押ししている。
■ 雨と風に強い畑は、“細胞と土”でつくられる
雨対策といえば排水、
風対策といえば支柱や防風ネット。
もちろん、それらは今も変わらず大切だ。
ただ、
“株の中身”が整っていれば、そもそも負けにくい
という事実は、まだあまり知られていない。
細胞壁が強い。
土がふかふか。
根が呼吸できる。
葉がバテない。
その積み重ねが、
雨にも風にも負けないトマトを育てる。
そして、その静かな土台づくりを支えるのが、
もみ殻由来のシリカなのだ。
■ 最後に
もみ殻という身近な素材から生まれたシリカは、
派手さはないが、確かに畑の“底力”を変えていく。
細胞が強くなり、
土が呼吸し、
根が止まらず、
葉が働き続ける。
その結果として、
雨の日も、風の日も、気温差のある日も、
トマトはぶれることなく育つ。
環境が読みづらい今の時代こそ、
“揺れにくい株づくり”は心強い味方になる。もみ殻シリカは、
そうした未来のトマトづくりを支える
静かなパートナーであり続けるだろう。
