病原菌に向き合う株へ。細胞壁から考えるトマトづくり

畑を歩いていると、ときどき一株だけ不自然にしおれたトマトが目に留まる。
その瞬間、胸の奥がかすかにざわつく。
青枯れ、萎ちょう、根の疲れ。
どれも“ほんの小さな弱り”から一気に広がることがあると知っているからだ。

こうした不安がまとわりつく季節に、近ごろ静かに評価を集めているのが、
植物の細胞壁を強くする自然素材、シリカ(ケイ素)である。

決して派手な資材ではない。
劇的な即効性をうたうものでもない。
それでも、気づかないうちに株の芯を支え、
“病気に向き合いやすい体勢”を考えるきっかけになる。

そうした静かな手応えが、畑の現場からじわりと広がっている。

目次

■ 「病原菌に影響を受けにくい状態」とは、どんな株なのか

トマトが病気に負けるとき、
その入口となるのは、細胞壁の弱った部分だ。

細胞壁とは、細胞を守る外側の“鎧”のようなもの。
ここが疲れていたり薄くなっていると、病原菌にとっては破りやすい扉になる。

そのため、健全な生育を保っている株では、
根・茎・葉の細胞構造が安定していることが多い。
“細胞レベルでの強さ”こそ、病気に立ち向かう第一歩なのだろう。

シリカが注目されている理由は、まさにこの細胞壁の材料になる点にある。
国際的な研究報告では、シリカと細胞構造の関係性について示唆がなされている。

細胞構造を考えるうえで、一つの視点を与えてくれる結果といえる。

■ 菌のほうが“弱気になる”ことがある

シリカは細胞を強くするだけではない。
実は、病原菌側の動きにも影響を与える。

中国の研究では、シリカを与えたトマトで
青枯れ菌とシリカ施用の関係について、海外で研究報告がなされている。

つまり、
植物側と病原菌側の関係性について、複合的に検討されている。

畑の健全性を考える際の一つの視点として注目されている。

■ 高温期でも“根が負けない”という安心感

病害が広がりやすいのは、夏の高温期だ。
土が締まり、地温が上がり、根の呼吸が奪われる。
根が弱ると、病原菌は一気に入り込む。

ここでもシリカは役に立つ。

中国農業科学院の試験では、
シリカを施したトマトの根の乾物重が 22.8〜51.6% 増え、
湿害や酸欠への耐性が高まったとされている。

根が太く、白く、動き続ける。
根の状態が安定していることは、健全な生育を考えるうえで重要になる。

さらに、もみ殻由来シリカは土をふかふかにし、
根の周りに細かな空気の道をつくる。
これは他のシリカ資材にはなかなか見られない、自然素材ならではの働きだ。

「今年は根が疲れない」
「高温期でも状態が安定しているように感じる」

そんな声が増えている背景には、この体質の変化がある。

■ 葉が“バテない”と、病気は寄りつきにくい

病気が入り込む前触れとして、
葉のバテや蒸散の乱れがよく現れる。

シリカを使った株の葉は、強い日差しの中でも意外と落ち着いている。
葉の細胞壁が強いと、光や熱のストレスを受けにくく、
光合成が安定し、その結果として導管の流れも乱れない。

表面的には病害の話に見えて、
葉の状態は、作物全体の健全性を考える重要な要素の一つである。

■ 病気に強い畑は、静かに“崩れない”

シリカを取り入れている農家が共通して口にするのは、次のような変化だ。

  • 午後になってもしおれにくい
  • 葉の厚みが落ちない
  • 終盤でも根が白い
  • 病気が広がりにくい
  • 株に「踏ん張り」がある

これらは科学的な作用の延長線にあるが、何より
“畑を歩くと、違いが分かる”
という実感とともに語られる。

病気をゼロにする資材ではない。
しかし、健全な生育環境を整えるための素材の一つとして位置づけられる。
そのため、シリカは派手ではないが確実な支持を集めている。

■ 最後に

健全なトマトづくりは、細胞レベルの状態に目を向けることから始まる。

病害に強い株とは、
根も、葉も、茎も、ひとつひとつの細胞がしっかりしている株のことだ。

その“しっかり”を下支えするのが、
シリカ(ケイ素)という自然素材である。

病原菌への直接的な対処ではなく、

作物の生育環境を整えるという考え方である。
いまの気候の厳しさを思えば、
そのアプローチはこれからますます価値を持つのだろう。

畑を歩いたとき、
「今年は安心だ」と思える株が増えていくように。

細胞壁から強くする。
そんな選択肢があるということを、静かに心に留めておいてほしい。

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