代表者メッセージ

ゼロから未来を築く

── 信頼と挑戦が、持続可能な世界を動かす。

幼い頃、夏休みになると父の運転するトレーラーに乗って、荷物を運ぶ旅に出た。大きな車体が走る振動は子どもの心を躍らせ、仕事と暮らしがひとつに繋がっていることを、肌で感じる時間だった。いつか自分もこの道を歩むだろう——そう思いながら成長していった。

家業を継ぐことは簡単な選択ではなかった。取引先で社会の基礎を学び、迷いながらも「自分は一人娘だからこそ、この会社を未来へ繋げたい」と決意した。会合に出席し、他社との縁を紡ぎながら、少しずつ「継ぐ」という言葉が現実に形を帯びていった。

そんな折、まだSDGsという言葉が世の中に浸透していなかった頃、廃棄されるはずのものが未来を変えるという話を耳にする。興味に駆られ、実際に工場を訪ねたのが、すべての始まりだった。

そこで出会ったのが「もみ殻」だった。稲作の副産物として山のように捨てられる殻。しかし、丁寧に温度を調整しながら焼けば、灰となり、やがて「シリカ」と呼ばれる宝に変わる。
白に近い灰色の粉は、土壌を改良し、野菜の栄養を高め、やがては医療や化粧品、さらには環境改善にも役立つ力を秘めていた。

「廃棄物を新しい命へ」——その発想に心が動いた。
しかも自社は運送を強みとする会社。もみ殻を集め、灰にし、運ぶ。多くの企業が悩む物流の壁を、自分たちは越えられる。まるで運命に導かれるように、廃棄されるものを再生する挑戦が始まった。

試験栽培では、トマトやナス、ハーブが土の力を取り戻し、かつてのように栄養価の高い実りを見せてくれる。さらにシリカは水に溶け、体の中で骨や爪や髪を支え、美容や健康にまで役立つことがわかってきた。アスファルトの熱を和らげ、芝生を育て、害虫を遠ざけ、匂いを消す。万能の力を持ちながら、自然に寄り添う素材——それがシリカだった。

そして、物語は新たな段階へ。
シリカを球体にした「シリカボール」。土壌や水質改善に応用し、農業の未来を変える構想が広がっている。特に、アフリカのように土壌が汚染され、作物が育たない地域で、シリカは「ゼロからプラスへ」と導く可能性を秘めている。

また、酪農による家畜の糞尿の臭いや地下水の汚染問題の解決にも大きく寄与する。

もみ殻は、ただの廃棄物ではない。大地と水、人の命を支える贈り物だった。
かつて父の背中を追いかけて乗り込んだトレーラー。その旅路の先に見つけたのは、循環する命の物語だった。

シリカは、過去から未来へとつながる「再生の証」。
今日もその灰は、世界のどこかで、土に還り、新しい命を育んでいる。