原料選びの現場で、
ここ数年、はっきり変わってきたことがある。
「安全であること」だけでは、もう語り切れなくなった。
もちろん、安全性は最優先だ。
それが揺らぐことはない。
ただ、安全であることは、前提条件になった。
その前提を満たした先で、
何を選ぶのか。
いま、多くの現場がその問いに直面している。
■ “問題がない”だけでは、選ばれない時代
原料の安全性評価は、この十数年で大きく進んだ。
刺激性、安定性、ロット差、供給リスク。
かつて課題だった点の多くは、
研究と制度によって整理されてきた。
その結果、
市場に出ている原料の多くが
「使って問題のない原料」になった。
裏を返せば、
どれを選んでも大きな事故は起きにくい。
だが同時に、製品としての“物語”が見えにくくなった。
■ 原料が“主役”になれなくなった理由
以前は、
「この成分が入っているから違う」
と言えた時代があった。
しかし研究が進み、評価軸が標準化されるほど、
機能説明は似通っていく。
レビュー研究や処方設計の議論では、
単一原料の機能よりも、
配合バランスや時間経過後の状態が
満足度に影響することが整理されている。
つまり、
強い原料=売れる原料
という単純な図式が、成り立たなくなった。
■ それでも、現場は「決め手」を探している
安全で、機能も一定以上。
それでも、「これを選ぶ理由」が欲しい。
製品の思想と結びつき、説明に一貫性があり、処方全体を壊さない。
そんな原料は、
派手な主役ではなくても、
物語の軸になれる。
ここで出てきたのが、
いわば“キラーヒロイン素材”という考え方だ。

■ キラーヒロイン素材とは何か
キラーヒロイン素材は、
圧倒的な強さを持つわけではない。
むしろ、
- 何をする原料かが明確
- 何をしないかも決まっている
- 処方全体の中で立ち位置が分かりやすい
そんな特徴を持つ。
主役を食わない。
けれど、いないと話が進まない。
世界観を成立させる存在だ。
■ もみ殻シリカが、この役割に当てはまる理由
もみ殻シリカが注目されているのは、
強い作用を持つからではない。
粉体材料や表面工学の研究では、
粒子の多孔性や嵩密度が、
吸着挙動、触感、光拡散に影響することがよく知られている。
もみ殻由来のシリカは、
多孔質で軽く、嵩高い構造になりやすい。
そのため、
皮脂を奪い切るのではなく、
過剰な状態を一時的に受け止める
という役割を設計しやすい。
これは、
即効性を競う素材ではなく、
表面環境を安定させるための素材
という位置づけになる。
■ “安全”の次に、何を語れるか
もみ殻シリカは、
安全であることは当然として、
その先の物語を語れる。
なぜ主役にしないのか。
なぜここで止めるのか。
なぜ、やりすぎないのか。
その判断が、研究背景や処方設計と矛盾なくつながっている。
この一貫性が、
原料選びの決め手になり始めている。
■ 最後に
“安全だけ”では、売れなくなった。
それは、安全が軽視されたという意味ではない。
安全が前提になったからこそ、
役割を語れる原料が求められている。
キラーヒロイン素材とは、
目立つ存在ではない。
だが、物語を成立させる存在だ。
原料選びは、性能競争から、設計思想の選択へ。その変化の中で、
もみ殻シリカは、静かだが確かな位置を占め始めている。
