美容・パーソナルケアの現場では、ここ数年、素材の評価軸が少し変わってきている。
「どれだけ効かせられるか」だけでは、設計が立ち行かなくなってきたからだ。
背景にあるのは、肌や頭皮に関する研究の積み重ねだ。
角層のバリア機能、皮脂の役割、常在菌との関係。
これらが整理されるにつれて、
取りすぎ・抑えすぎが、かえって不安定さを招く
という事実が、かなりはっきりしてきた。
■ 業界が直面している、具体的な課題
たとえば皮脂。
皮脂はテカリの原因として嫌われがちだが、
皮膚科学の研究では、皮脂が角層表面の水分保持や外的刺激の緩衝に関与していることが示されている。
実際、皮脂を強く除去した場合、
- つっぱり感
- 刺激感
- バリア機能の低下
が起こりやすいことは、複数のレビューで指摘されている。
つまり、
皮脂は「多すぎても問題」「なさすぎても問題」
という、非常に扱いの難しい存在だ。
同じことは、頭皮やにおいの分野でも起きている。
近年の研究では、体臭や頭皮臭が分泌物そのものではなく、
皮膚常在菌との相互作用によって発生することが示されている。
過度な殺菌や脱脂が、かえって臭いを不安定にするケースがある、という報告も珍しくない。
■ そこで注目されたのが「物性で働く素材」
こうした状況の中で、
生理機能に直接介入しない素材への関心が高まってきた。
シリカはその代表例だ。
シリカは、
ターンオーバーを促進するわけでも、
皮脂分泌を抑制するわけでもない。
働き方はあくまで物理的だ。
- 表面の皮脂を一時的に吸着する
- 光を散乱させ、視覚的なテカリを和らげる
- 感触を調整し、摩擦感を下げる
これらは、化粧品技術の分野では古くから知られている作用だが、
近年は「どれだけ吸うか」よりも
時間経過後の感触やバリアへの影響が重視されるようになってきた。
■ もみ殻シリカが“最新”と呼ばれる理由
シリカ自体は新素材ではない。
では、なぜ「もみ殻シリカ」が注目されているのか。
理由のひとつは、構造だ。
もみ殻由来のシリカは、
植物が生育過程で形成した構造を背景に持つため、
多孔質で軽く、嵩高い粒子になりやすい。
この構造は、吸着力を持ちながらも、
過剰に皮脂を奪いにくい設計につなげやすい。
実際、粉体材料の研究では、
比表面積や細孔構造が吸着挙動と使用感に影響することが知られている。
単純に「吸着量が多い=優れている」わけではない、という整理は、
すでに共通認識になりつつある。

■ 現場で評価されているのは「効き目」ではない
もみ殻シリカを配合しても、
劇的な体感変化は起きにくい。
だが、処方評価の現場で見られているのは、
次のようなポイントだ。
- 夕方になっても急につっぱらない
- 皮脂戻りが穏やか
- 洗浄後・クレンジング後の疲労感が出にくい
- 継続使用で状態が乱れにくい
これらは、
短期試験よりも、
使用継続評価や官能評価で差が出やすい項目だ。
つまり、
効かせる素材ではなく、設計を安定させる素材
として見られている。
■ 導入判断のための、現実的な視点
もみ殻シリカが向いているのは、
- 皮脂対策を入れたいが、乾燥クレームを避けたい
- 高機能成分を活かしつつ、使用感を安定させたい
- 長期使用を前提とした製品設計
こうしたケースだ。
一方で、
即効性や変化量を前面に出す処方では、
主役にはなりにくい。
これは欠点ではなく、
役割が明確な素材だということでもある。
■ 最後に
今の美容業界は、
新しい成分を探しているというより、
やりすぎない設計の答えを探しているように見える。
研究が示してきたのは、
皮膚や頭皮が想像以上に「バランスの上に成り立っている」という事実だ。
もみ殻シリカは、
そのバランスを大きく動かさず、
表面環境を静かに整えるための素材だ。
知らなくても困らない。
けれど、
知っていれば、設計の無理を一段減らせる。
もみ殻シリカは、いまの美容が直面している「やりすぎない設計」という課題に対して、現実的な答えのひとつを示している。
