化粧品業界は、長いあいだスペックで競ってきた。
含有量、数値、エビデンス、比較表。どれも必要で、どれも正しかった。
ただここ数年、現場でははっきりした変化が起きている。
スペックを積み上げても、製品が選ばれにくくなっているという感覚だ。
安全性、安定性、供給体制。
これらは今や差別化の武器ではなく、前提条件になった。
研究や制度が進んだ結果、極端なリスクを持つ原料は淘汰され、
「使って問題のない原料」だけが市場に並ぶようになった。
業界としては健全な進化だ。
ただその一方で、
どの原料を選んでも説明が似てしまう
という、新しい課題が浮かび上がっている。
■ 研究が示してきた「スペックの限界」
皮膚科学や処方設計に関するレビュー研究を読み込むと、
共通して整理されているポイントがある。
製品の使用感や満足度は、
単一原料の濃度や数値よりも、
- 原料同士の相互作用
- 配合バランス
- 使用後、時間が経過したあとの状態
に強く影響される、という点だ。
つまり、
スペックを足し続けても、体感や評価は比例しない。
これは感覚論ではなく、研究の積み重ねが示してきた現実でもある。
さらに、過剰な機能を盛り込んだ処方ほど、
刺激感のばらつきや使用感の破綻が起きやすい、
という指摘も複数の研究で共有されている。
「効かせたい」という設計意図が、
結果的に安定性を下げてしまう。
この逆転現象が、いま多くの現場で起きている。
■ スペック競争から「降りる」という合理的判断

ここで言う「降りる」とは、
スペックを軽視することではない。
スペックを満たした上で、それ以上を競わない
という判断だ。
数値を上げ続けるのではなく、原料の役割を明確にする。
何をするのかと同時に、何をしないのかを決める。
研究が示してきた方向性も、この考え方と一致している。
強い機能を重ねるより、処方全体が長期的に安定する設計のほうが、
結果として満足度が高くなる。
唯一無二とは、特別な機能を持つことではない。
役割が他と重ならないことだ。
■ もみ殻シリカが「唯一無二」と言える理由
もみ殻シリカが注目されている理由は、
数値を競える素材だからではない。
粉体材料や表面工学の分野では、
粒子の多孔性や嵩密度が、
吸着挙動、触感、光拡散、使用感の持続性に影響することが
よく知られている。
もみ殻由来のシリカは、
植物が成長過程でケイ素を蓄積した構造を背景に持ち、
多孔質で軽く、嵩高い粒子になりやすい。
この構造により、
皮脂を奪い切るのではなく、過剰な状態を一時的に受け止める
という役割を設計しやすい。
これは、
「強く効かせる原料」ではなく、
表面環境を安定させるための原料
という、はっきりした立ち位置を持つ。
数値で競わない。
即効性を誇らない。
その代わり、処方全体のバランスを壊さず、
使い続けたときの安定性に寄与する。
■ 最後に
スペック競争から降りるという選択は、逃げではない。
研究が進んだ結果、自然にたどり着いた判断だ。
安全性が前提になり、機能が出揃った今、
差別化の軸は
「どれだけ足したか」から
「どこまで踏み込まなかったか」へと移っている。
もみ殻シリカは、数値で主張する原料ではない。
その代わり、処方全体の役割を明確にし、
製品の思想をブレさせない。
原料を増やす時代は、もう十分に成熟した。
これから問われるのは、
原料に“役割”を与えられるかどうか。
スペックではなく、設計で語る。
その選択を支える原料として、
もみ殻シリカは、いま現実的な意味を持ち始めている。
